フォークリフトで吊り作業:用途外使用!?アタッチメントで安全荷役
あなたの現場にも、少々運びたいのになんとも運びにくいもの、ありませんか?
●フレコンバッグ
●木枠
●小型機器
●銅線
●パネル などなど…
軽く吊って運べればいいのだけど、わざわざクレーン車を用意するほどでもないし、手で運ぶには重いし、パレットにはうまく乗らないし。身近にある機械で、ちょっとしたものをうまく吊って運べる機械はないものか。
……そうです、フォークリフトです!
本記事では、大注目のアタッチメント「簡易フック」「クレーンアーム」に焦点を当てつつ、フォークリフトで吊り作業をする方法と、フォークリフトでの吊り作業は用途外使用なのか!?について解説していきます。
①【フォークリフトで吊り作業をする方法】
フォーク(ツメ)を使う
荷をツメに引っ掛ける方法は手軽なものの、非常に危険です。ワイヤーなどを直接ツメに引っかけると下記のような事故を引き起こす可能性があります。
- 走行振動でワイヤーが前後左右に動く⇒転倒、落下
- 吊り荷が揺れてフォークリフトも不安定になる⇒転倒
- フォークの先で吊ると、前後のバランスを崩す⇒転倒、落下
- ツメに直接ワイヤー等を掛けるとすべって吊り荷が落下しやすい⇒破損、ケガ等
- ワイヤーがツメでこすれてキンク(よれ・ねじれによる型崩れ)する⇒破損
この記事を読んでいただいている方にも、ツメにかけた荷が滑ってヒヤリ!を経験された方もいらっしゃるのではないでしょうか。
フォークリフトを扱われている現場を見ていると、軽い気持ちでツメに荷物をかけて吊り作業をされている方も多いのですが、フォークリフトの専門家としては全く推奨できない危険な作業です。
吊り作業用アタッチメントを使う
フォークリフトで荷物を吊るために作られたアタッチメントを用いる方法です。アタッチメントを用いることで、フォークリフトでクレーンのように荷物を吊り上げられるようになります。
ツメとは違い、吊り上げる荷をすべらないように固定できるため、安全に吊り上げ作業ができるように各メーカーが考慮し、オプション設定されています。
吊り作業用アタッチメントには下記のような種類があります。
●フック式
フォークリフトに荷を吊るためのフックを固定するタイプのアタッチメント
例)簡易フック(吊りフック)、クレーンアーム など
●滑り止め式
フォークリフトのツメに強力な滑り止めを磁石や粘着素材で付けて荷滑りを防止するアタッチメント
今回の記事では、より安全に荷を固定できるフック式のアタッチメント「簡易フック(吊りフック)」「クレーンアーム」をご紹介いたします。
②【簡易フック】
簡易フックとは
簡易フックとはフォークリフトのツメに装着して使うアタッチメントです。フォークリフトで荷物をつり上げたいときは、取扱いがかんたんな簡易フックがぴったり。フォークに差し込んで固定するだけで荷物のつり上げが可能です。
簡易フックの重さは30kg~40kgのため、一人でも取付け・取外しができます。吊り作業をしないときは、簡易フックをさっと外して普通のフォークリフトとしてもお使いいただくことができます。小さなアタッチメントのため、保管の場所も取りません。キチンとした耐久性のあるフックがついているので、ワイヤーを掛けても安心です。
その他にも、ピー・シー・エスの簡易フックには、
●日本製
●フォークリフトの爪にセットするだけ
●固定用ボルトを締めるだけ
●ラッチ付スイベルフック装着の向きが自由かつ振動にも安心
という嬉しい特徴があります。
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普段使用しているフォークリフトで吊り上げ作業もできてしまうため、ひとつ持っておくと便利です。1台のフォークリフトで様々な荷役をされる農家の方や工事現場におすすめです!
簡易フックの取り付け方
①2本のツメをフォークレールの中央に揃え、簡易フックを差し込みます。
②荷物を吊る位置を決め、簡易フックを左右のねじで固定します。この際に、簡易フックがずれないことを確認してください。
簡易フックを取り付ける位置は、吊りたい荷物の状況や車両に付いている荷重表に従って適切な場所をお選びください。
たとえば、この場所に簡易フックを取り付けた場合は吊れる最大荷重は2500kgとなります。簡易フックがツメ先に移動するにしたがって最大荷重が減少しますのでお気を付けください。
簡易フックで荷役をする方法
①吊る荷物の真上に簡易フックが来るようにフォークリフトを近づけます。
②吊りベルトやワイヤーをフックにしっかりと掛けます。
③ベルトやワイヤーをフックへかけた後、フックの外れ止めが効いていることを再度確認します。
④荷物を地切りする際に、荷物の揺れや吊りベルトの外れなどが無いよう確認します。荷物を吊り上げたら周囲をよく確認したうえで移動しましょう!
☆吊り作業の安全ポイント…“急”の付く操作をしない!
移動の際は、吊り上げた荷物が振れることでバランスが悪くなります。急ブレーキや急旋回、急発進、急加速…などの“急”の付く操作は事故の原因となりますので、絶対にしないでください!
③【クレーンアーム】
クレーンアームとは
フォークリフトのツメの代わりにフォークレールに直接取り付けるタイプのアタッチメントです。
クレーン車では入れないような狭いスペースでも、クレーンアームがあれば小回り抜群のフォークリフトで吊り上げ運搬作業が可能になります。
本格的な吊り作業がメインの方はもちろん、簡易フックと異なりクレーンアーム自体で高さを取れますので、高さ制限などでマストを大きく上げられない現場の方にもおすすめです。
クレーンアームの取り付け方
①クレーンアームをユニックや他のクレーンで吊って立たせます。
②クレーンアームの上部フックをフォークレール上段に引っ掛けます。
③クレーンアームの下部フックをフォークレール下段の中心にある切り欠きにはめます。
④切り欠きにクレーンアームの下部フックが入ったら左へスライドさせ、中心位置に来たらピンで位置を固定します。
☆取付作業の安全ポイント…クレーンアームを吊り上げる際は、周囲の安全を確保して行ってください!
クレーンアームで荷役をする方法
①吊る荷物の真上にフックが来るようにフォークリフトを近づけます。
②吊りベルトやワイヤーをフックにしっかりと掛けます。
③ベルトやワイヤーをフックへかけた後、フックの外れ止めが効いていることを確認します。
④荷物を地切りする際に、荷物の揺れや吊りベルトの外れなどが無いよう確認します。荷物を吊り上げたら周囲をよく確認したうえで移動しましょう!
☆吊り作業の安全ポイント…“急”の付く操作をしない!
移動の際は、吊り上げた荷物が振れることでバランスが悪くなります。急ブレーキや急旋回、急発進、急加速…などの“急”の付く操作は事故の原因となりますので、絶対にしないでください!
④【フォークリフトでの吊り作業は合法なのか?】
小型移動式クレーン免許は必要?(フォークリフト構造規格 第八条)
フォークリフトのマストにクレーンのようなアタッチメントを装着した場合でも、小型移動式クレーン扱いにはならず、フォークリフトとしてお使いいただけます。
労働安全衛生法(安衛法)第四二条の規定に基づいて定められたフォークリフト構造規格の第八条には次のように記されています。
(フォーク等)
第八条 フォーク等(フォーク、ラム等荷を積載する装置をいう。以下第十二条第四号において同じ。)は、次に定めるところに適合するものでなければならない。一 材料は、鋼材とし、著しい損傷、変形又は腐食がないものであること。
二 フォークにあっては、基準荷重中心に最大荷重の荷を負荷させたときにフォークに生ずる応力の値は、当該フォークの鋼材の降伏強さの値の三分の一の値以下であること。
ここでは、フォークを含む荷を積載するアタッチメント部分を総じて「フォーク等」と呼称しています。つまり、クレーンアームも簡易フックも、この「フォーク等」に含まれていると解釈できるのです。
これは、フォークリフトのアタッチメントの種類が無数に存在するため、構造規格によってアタッチメントの種類を限定することを避けたものと考えられます。クレーンアームや簡易フックをこの「フォーク等」に含めることができない法的根拠が存在しないので、簡易フック(吊りフック)を装着したフォークリフトは、クレーンではなくフォークリフトと解釈することができます。
また、移動式クレーンについて、労働安全衛生法施行令第一条の第八号において
八 移動式クレーン 原動機を内蔵し、かつ、不特定の場所に移動させることができるクレーンをいう。
と定義されていますが、この労働安全衛生法施行令第一条第八号について、昭和47年9月18日付で労働省労働基準局長から都道府県労働基準局長に通達された基発第六〇二号のⅡ-1-(4)には、第八号の移動式クレーンには、フォークリフト、揚貨装置およびストラドルキヤリヤーは含まれないこと。と明記されています。
これらのことから、「クレーンアームや簡易フックを装着したフォークリフトは移動式クレーンではなくフォークリフトである」ということになるため、運転のために小型移動式クレーン免許は不要で、フォークリフト運転技能講習修了(1t未満は特別教育修了)で運転することができるといえるのです。
用途外使用なのか?(労働安全衛生規則 第百五十一条の十四)
簡易フックやクレーンアームを装着したフォークリフトでの揚貨作業は用途外使用にはあたらないとの見解が出ています。フォークリフトをお使いの皆様は、特別教育や技能講習を受講される中で、次の条文を見たことがあると思います。
労働安全衛生規則(主たる用途以外の使用の制限)
第百五十一条の十四 事業者は、車両系荷役運搬機械等を荷のつり上げ、労働者の昇降等当該車両系荷役運搬機械等の主たる用途以外の用途に使用してはならない。ただし、労働者に危険を及ぼすおそれのないときは、この限りでない。
ここでは、フォークリフトを主たる用途以外に用いてはならないということが記載されています。その例として「荷のつり上げ」「労働者の昇降」が挙げられており、簡易フックやクレーンアームがまさにこの「荷のつり上げ」に該当するのでは、という点から、用途外使用の不安を抱かれる方も多くいらっしゃいます。
しかし、フォークリフトの主たる用途は「持ち上げること」であるため、フォークリフト構造規格の第八条で定義される「フォーク等」のひとつである簡易フックやクレーンアームを装着したフォークリフトで揚貨作業をするということは、労働安全衛生規則第百五十一条の十四の主たる用途以外の使用の制限にはまったく当たりません。
また、同条文にも「ただし、労働者に危険を及ぼすおそれのないときは、この限りではない。」と書かれており、しっかりとフォークリフトに固定されたアタッチメントであれば荷のつり上げなどの用途に使用しても良いと読むこともできます。
このことから、簡易フックやクレーンアームを装着したフォークリフトでの揚貨作業は用途外使用にはあたらないといえます。
玉掛け技能講習修了は必要?(労働安全衛生法施行令 第二十条の十六)
玉掛け技能講習は労働安全衛生法第六十一条第一項と、労働安全衛生法施行令第二十条の十六に基づいて実施されています。
労働安全衛生法 第六十一条第一項(就業制限)
第六十一条 事業者は、クレーンの運転その他の業務で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の当該業務に係る免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う当該業務に係る技能講習を修了した者その他厚生労働省令で定める資格を有する者でなければ、当該業務に就かせてはならない。労働安全衛生法施行令 第二十条の十六(就業制限に係る業務)
第二十条 法第六十一条第一項の政令で定める業務は、次のとおりとする。
(中略)
十六 制限荷重が一トン以上の揚貨装置又はつり上げ荷重が一トン以上のクレーン、移動式クレーン若しくはデリックの玉掛けの業務
これらによると、玉掛け技能講習修了資格は、クレーン、移動式クレーンもしくはデリックの玉掛作業を行うための資格のため、基発第六〇二号のⅡ-1-(4)に見るように「移動式クレーン」には該当しないフォークリフトの吊り作業には必須ではないということになります。
これらのように簡易フックやクレーンアームを用いた荷役にあたって小型移動式クレーン免許や玉掛け技能講習修了は必須ではありませんが、作業としてはクレーンや玉掛けと同様の作業のため、「小型移動式クレーン免許」や「玉掛け技能講習修了」をお持ちの方が作業されることが望ましいものとなります。
導入をご検討の方は、一度お使いになる地域を管轄している労働局や労基署へ確認した上でご使用をお願いいたします!
⑤【まとめ】
吊り作業用アタッチメントを用いることで、フォークリフトでも簡単に吊り作業ができるようになります。軽作業なら「簡易フック」、吊り作業がメインなら「クレーンアーム」!用途に合ったアタッチメントを使って、安全に吊り作業をしましょう。
ピー・シー・エスでは、簡易フック・クレーンアームを車両とセットはもちろん、アタッチメント単体でのレンタルも行っております。お電話やお問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。
また、簡易フックは販売も行っております。導入をご検討の方は、お電話やホームページからお問い合わせいただくか、オンラインストアでもご購入可能ですので、そちらもぜひチェックしてみてください。
皆様もぜひこの簡易フック・クレーンアームを使って、安全に吊り作業をしてみてはいかがでしょうか。最後までお読みいただきありがとうございます。
今回の記事はピー・シー・エス仙台営業所の中野がお送りしました。