フォークリフトは便利だけど危険?~知らないと怖い法令違反の話~

資格取得の勉強の一環で、労働安全衛生法について学んでいるときのこと。
フォークリフトに関する規定の細かさに驚きました。
普段、当たり前のように業務で使われているフォークリフトが、実は法律で厳しく管理されている「危険を伴う機械」だったという事実に、ハッとさせられたのです。
この記事では、フォークリフトを安全に、そして法令を遵守して使うために必要な基本ルールと、実際によくある違反事例をまとめています。
「知らなかった」で済まされない内容ばかりなので、この機会に一緒に確認しておきましょう。
1. 労働安全衛生法とは
労働安全衛生法は、1972年に制定された「働く人の安全と健康を守る」ための法律です。
事故や健康被害の防止だけでなく、快適な職場環境の整備も目的とされています。
この法律の施行後、約10年で労働災害の件数が半減したという実績もあるほど。
フォークリフトに関するルールも、この法律の中で定められていて、導入・使用にはこの法律の理解が欠かせません。
2. 労働安全衛生規則とは
労働安全衛生法をもとに、より具体的な実施内容を定めたのが「労働安全衛生規則」です。
厚生労働省が定めたこの規則には、フォークリフトに関する項目が細かく記載されています。
運転資格や点検、教育の実施方法など、「どうすれば安全に使えるのか?」という実務的なルールがぎっしり。
つまり、法律(労働安全衛生法)と規則(労働安全衛生規則)の両方を理解しておく必要があるんです。
3. フォークリフト作業で想定される法令違反
3-1. 運転資格の違反
フォークリフトは、最大荷重によって必要な資格が異なります。
最大荷重 | 必要な資格 | 根拠 |
---|---|---|
1トン以上 | フォークリフト運転技能講習修了者 | 労働安全衛生法施行令第20条第11号 |
1トン未満 | フォークリフト運転特別教育修了者 | 労働安全衛生規則第36条第5号 |
これらの資格を持たずに運転させると、たとえ事故が起きていなくても法令違反です。
「うちは小さい工場だから」「一時的な作業だから」と見逃されがちですが、ここは要注意です。
3-2. 安全教育の未実施
労働安全衛生法第60条の2では、危険または有害な業務に従事する従業員に対して、安全衛生教育を行うことが義務付けられています。
対象となるのは以下のような人たちです:
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就業制限業務の従事者
-
特別教育が必要な業務の従事者
-
上記に準ずる危険有害業務の従事者
教育は1日程度の実施が原則で、講義や事例研究、討議などの方法で行います。
講師は専門知識だけでなく、教育技法も求められ、記録は個人ごとに保存しておく必要があります。
3-3. 自主点検の不備
フォークリフトは、使用前に点検を行う義務があります(労働安全衛生規則第151条の25)。
主な点検項目は以下の通り:
-
操縦装置・荷役装置・油圧装置の機能確認
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車輪や照明、警報装置の異常チェック
さらに、定期的な点検も義務付けられています。
点検の種類 | 頻度 | 実施者 |
---|---|---|
月次点検 | 毎月1回 | 使用者または整備担当者 |
年次点検(特定自主検査) | 年1回 | 登録検査業者または有資格者 |
点検後は検査標章を貼り、検査記録を3年間保存しなければなりません。
3-4. 誤った使用方法
フォークリフトの使い方についても、明確な禁止事項があります。
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【第151条の14】 荷役以外の使用禁止
例:人をパレットに乗せて昇降させる → NG -
【第151条の13】 作業中、運転席以外に人を乗せてはならない
ただし、転倒の恐れがなく、かつ安全設備が施されている場合に限り、例外が認められるケースもあります。
いずれにしても「安全対策ありき」です。
4. まとめ
フォークリフトは、現場で欠かせない便利な存在。
でもその一方で、ルールを守らなければ重大な事故につながるリスクを抱えています。
そして、法令違反は「知らなかった」では済まされません。
日々の運用の中で、基本的なルールをきちんと理解しておくことが、現場の安全と信頼を守る第一歩になります。