比較解説:ディーゼルエンジンとガソリンエンジン

自動車やフォークリフト、トラックなど、暮らしを支えるさまざまな乗り物に使われているエンジン。
人々の生活にもっとも身近な原動機でありながら、その仕組みを知っている方は意外と少ないのではないでしょうか。
今回は、エンジンの中でもよく知られる「ディーゼルエンジン」と「ガソリンエンジン」に焦点をあて、その違いを仕組みや性能、環境への影響など、幅広い視点から解説していきます。
そもそもエンジンってなに?
一言で「エンジン」といっても、それが指すものの範囲はとても広いです。ディーゼルエンジンとガソリンエンジンは、エンジンというくくりの中でも内燃機関という分類にあたります。
内燃機関とは、その機関の中にある燃焼室で燃料を燃焼させて高温高圧のガスを作り、このガスの膨張によって熱エネルギーを機械的な仕事に変換する装置のことをいいます。
その中でもディーゼル・ガソリンエンジンは容積型の往復運動機関という分類になります。燃焼室内で間欠的な燃焼が起き、その燃焼ガスの力によってシリンダ内をピストンが往復運動することによって動力を得ることができるのです。
比較!ディーゼルエンジンとガソリンエンジン
エンジンの基本構造に大きな違いはありませんが、燃料と点火方法が異なります。
ディーゼルエンジンは軽油を燃料とし、圧縮着火で動作します。
空気を高温高圧に圧縮し、そこに軽油を噴射することで自然着火させるしくみです。
- 空気のみをシリンダーに吸入
- ピストンで圧縮(圧縮比は15〜23程度)
- 高温になった空気の中へ燃料を直接噴射し、自然着火
- 爆発によりピストンが押され、動力が得られる
△ディーゼルエンジン
一方、ガソリンエンジンはガソリンを燃料とし、花火点火方式で動作します。
シリンダー内に取り込んだガソリンと空気の混合気をスパークプラグの火花で着火させます。
- 空気とガソリンを混合してシリンダーに吸入
- ピストンで圧縮(圧縮比は7〜14程度)
- 点火プラグで火花を出して混合気を燃焼
- 爆発によりピストンが押され、動力が得られる
△ガソリンエンジン
この燃焼方法の違いが、両エンジンの性能特性に大きな影響を与えています。
表にしてまとめると大まかに次のような違いがあります。
ディーゼルエンジン | ガソリンエンジン | |
燃料 | 軽油 | ガソリン |
点火方式 | 圧縮着火 (高温高圧で燃料が自然発火) |
点火プラグによる火花点火 |
圧縮比 | 高め (15〜23程度) |
低め (7〜14程度) |
燃費性能 | 良い | ディーゼルよりやや劣る |
トルク | 低回転でも大きなトルクを発生 | 高回転寄り 小さめのトルク |
音や振動 | 大きめ | 静か |
耐久性 | 高い (構造が頑丈) |
やや低い |
燃費 | 優れている (軽油の熱効率が高い) |
ディーゼルよりやや劣る |
ディーゼルエンジンの特徴
メリット
- 優れた燃費性能
ディーゼルエンジンは熱効率が高く、ガソリンエンジンと比較して約20~30%ほど燃費が優れています。
燃料単価も比較的安いため、長時間稼働する現場では燃料コストの削減効果が顕著にみられます。 - 強力なトルク
低回転域から大きなトルクを発生させるため、重量物の運搬や傾斜での作業に適しています。
この性質により、大型エンジンフォークリフトのほとんどがディーゼルエンジンを搭載しています。 - 耐久性の高さ
強い圧縮に耐えうる頑丈な構造により、過酷な使用環境でも長期間安定した性能を維持します。 - 軽油の安全性
軽油はガソリンと比較して引火点が高く、取り扱いが比較的安全とされています。
デメリット
- 初期投資が高額
エンジン本体の製造コストが高いため、車両価格がガソリンより高くなる傾向があります。 - 排ガスと騒音
特に古いディーゼルエンジンでは、黒鉛の発生や騒音や問題となる場合があります。 - 寒冷地での始動性
気温が低い環境ではクランキングによる燃焼室壁面の温度上昇が鈍いため始動に時間がかかる場合があります。
また、軽油は固まり始める温度(流動点)が比較的高いため、極端に寒い環境での使用に向きません。
☆関連記事 → グローランプが消えてからエンジンを始動しましょう! | フォークリフトのスペシャリスト ピー・シー・エスの業務日誌
ガソリンエンジンの特徴
メリット
- 静粛性
ディーゼルエンジンと比較して動作音が静かで、住宅地付近などの騒音を立てづらい環境での使用に適しています。
- 始動性の良さ
ガソリンの引火点はマイナス40度以下のため、気温に関係なく素早い始動が可能です。朝一番の作業開始もスムーズです。 - 初期コストの安さ
車体本体価格が比較的リーズナブルで、初期投資を抑えることができます。 - メンテナンスの容易さ
構造がシンプルで、一般的な整備工場でもメンテナンスが可能です。
デメリット
- 燃費性能
ディーゼルエンジンと比較すると燃費が劣り、長時間稼働時のランニングコストが高くなります。 - トルク特性
高回転域でのパワーは優秀ですが、低回転域でのトルクはディーゼルエンジンに劣ります。 - ガソリンの取り扱い
引火点が非常に低く、より注意深い取り扱いが必要になります。
エンジンフォークリフト選び方ガイド
フォークリフトの場合は、使用環境や作業現場に応じて使い分けられています。
ディーゼルエンジンが適している方
- 屋外作業が中心
倉庫敷地内や建設現場、港湾施設などでは、排気ガスや騒音の問題が屋内ほど深刻にならないため、ディーゼルエンジンの優れた耐久性と燃費性能を最大限に活用できます。 - 長い時間連続で稼働させたい
燃費の良さでランニングコストを抑えることができ、頑丈な構造により長時間稼働でも安定した性能を維持します。 - 重量物を頻繁に運ぶ
低回転域からの強力なトルクにより重い荷物もスムーズに持ち上げることができ、安全な作業が可能です。 - 燃費が気になる
ガソリンエンジンと比べ燃費が良い傾向にあり燃料単価も安価なため、ランニングコストの削減を重視されるお客様におすすめです。
ディーゼルフォークリフトは、パワフルで燃費効率に優れた特性から、重労働や長時間労働を要する現場で真価を発揮します。オフロード法に対応した最新の排ガス処理技術によって環境性能も大幅に向上しており、従来の課題であった排ガス問題も大きく改善されています。初期投資こそ高めですが、ランニングコストの削減効果により中長期的には経済的なメリットも大きくなります。特に屋外作業や大型荷物の運搬が多い方にとって頼れるパートナーになること間違いなし!
ガソリンエンジンが適している方
- 騒音を抑える必要がある環境
ディーゼルエンジンと比較して動作音が静かなため、住宅地や病院、学校などの近辺でも安心して使用できます。
※バッテリーフォークリフトのほうがより静かなため、電源の用意や充電時間を確保できる場合はバッテリーフォークリフトをおすすめいたします。 - 必要な時だけ短時間使用する
優れた始動性により使いたいときにすぐに稼働でき、短時間の作業でも効率的に使用できます。 - 軽めの荷物中心
軽量物の運搬で十分なパワーを発揮し、初期コストの安さも相まってコストパフォーマンスも◎
ガソリンフォークリフトは、扱いやすさと環境性能に優れている特徴によって多様な作業現場で活躍できる汎用性の高さが魅力です。初期コストを抑えながら静粛性や始動性の良さを活かした効率な作業が可能となります。
また、ガソリンエンジンはディーゼルエンジンと比べてコンパクトなため、トヨタ・プチランナーGのように超小型サイズで設計されているものもあります。屋外にて1トン未満の荷物を運ばれる方で車体は小さければ小さいほどよい!とお考えであればガソリンフォークリフトは非常に魅力的な選択肢となります。
ピー・シー・エスのレンタル・中古販売では、お客様のご使用環境から最適なエンジンフォークリフト・バッテリーフォークリフトをご提案いたします。
もしどちらのエンジンを選ぶべきか迷われている方がいらっしゃいましたら、弊社ホームページよりぜひお気軽にお問合せください。
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最新の排出ガス処理技術
オフロード法とは
2006年に施行された「特定特殊自動車排出ガス規制法」(通称:オフロード法)は、建設機械やフォークリフトなどの特殊自動車の排出ガス規制を定めた法律です。この法律により、フォークリフトは新車を販売するにあたって2003年以降数年おきに段階的に設けられた厳しい排ガス基準値をクリアすることが義務付けられてきました。
☆外部リンク → 特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律 | e-Gov 法令検索
オフロード法の目的は、大気汚染の原因となる窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM=すす)などの削減により、環境保護と公衆衛生の向上を図ることです。
この規制により、メーカー各社は不断の努力によってEGRやDPF、SCR、TWCといった排ガス処理技術の開発を加速させ、大幅な排ガス浄化を実現しています。
△2014年基準(第四次規制)を満たしていることを示すラベル
ディーゼルエンジンの排出ガスと処理技術
ディーゼルエンジンは、燃焼温度が高いため、窒素酸化物(NOx)が発生してしまいます。
また、軽油の特性上、燃料の不完全燃焼によって粒子状物質(PM)も排出されやすいのが特徴です。
これらを抑えるために、次のような排ガス処理技術が採用されています。
- EGR(排気ガス再循環装置)
排気ガスの一部を再び吸気側に戻すことで燃焼温度を下げ、NOxの発生を抑制する。 - DPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)
排気ガス中のPM(すす)をフィルターで捕集し、一定量たまったタイミングで高温で焼き切る再生処理を行う。 - 尿素SCRシステム
尿素水(AdBlue)を排気中に噴射し、排ガス中のNOxを無害な窒素と水に還元する。大型ディーゼル車に多く使われ、より厳しい排ガス規制にも対応可能。
☆関連記事→ アドブルー®とは:尿素SCRシステムの基礎知識 | フォークリフトのスペシャリスト ピー・シー・エスの業務日誌
ガソリンエンジンの排出ガスと処理技術
ガソリンエンジンから排出される主な有害物質は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)です。
近年のダウンサイジングターボ化により窒素酸化物(NOx)が問題となることもあります。
これらの浄化のために三元触媒コンバーター(TWC)が利用されます。
- 三元触媒コンバーター(TWC)
白金、ロジウム、パラジウムなどの貴金属を用いて、CO、HC、NOxの3種類の有害物質を酸化・還元し無害な物質へ浄化する。
まとめ
ディーゼルエンジンとガソリンエンジンには、それぞれ明確な特徴があります。
- ディーゼルエンジン
燃費◎、パワーや耐久性を求めるとき、長時間稼働に最適 - ガソリンエンジン
静粛性や始動性重視、初期コストを抑えたいとき、断続稼働に最適
ディーゼルエンジン・ガソリンエンジンそれぞれの特徴と個性についておわかりいただけましたでしょうか。
いくら語っても語りつくせない、ロマンの塊それがエンジン。この記事を読んで、あなたに少しでもエンジンのことを好きになっていただけたとしたら光栄です。
さて、フォークリフトを導入するにあたって最適なエンジンタイプを選択するためには、お客様の作業環境や稼働時間、予算などを総合的に検討する必要があります。
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今回の記事は空冷4サイクルOHC単気筒が大好きな中野がお送りしました。