フォークリフトの充電方法:日々の注意点から電源選定まで
バッテリーフォークリフトは、その名の通りエンジンではなくバッテリーで駆動するフォークリフトです。燃料を携行缶で買ってくる必要がない手軽さや、近年のSDGsへの意識の高まりもあり、倉庫から建設現場までさまざまな場面で活躍しています。
今回の記事では、バッテリーフォークリフトの充電の方法と注意点、電源の選定、充電できないときの対処方法を解説していきます。
1.充電の方法:普通充電・均等充電・予約充電
フォークリフトへ充電ケーブルを差し込む
まずは、フォークリフト本体に付いている充電プラグ差込口へ充電ケーブルのプラグを差し込みます。
☆注意ポイント☆
- 充電プラグについている水滴や汚れを拭き取りましょう。
- 充電プラグに焦げや変形がある場合は事故の危険があるため使用を中止し、フォークリフト修理店へ連絡してください
- 充電プラグを差す際は、ケーブルではなく必ずプラグ本体を持ち、充電プラグの差込ラインが隠れるまでまっすぐに力をかけて差し込んでください。
電動フォークリフトは、携帯電話のように充電ケーブルを差すだけでは充電できません。
電動フォークリフトにはこのような充電ボタンが付いており、充電コードを差した後にボタンを押すことで充電がスタートします。
各充電方法の呼び名はメーカーによって異なりますが、ここではトヨタのフォークリフトを例に挙げて説明いたします。
普通充電・自動充電
普通充電とは、フォークリフトのバッテリーを使われた分だけ充電する方法です。日常的にはこちらの普通充電を使用します。
☆注意ポイント☆
- 電圧残量が全容量の30~50%になったときに充電をしましょう。こまめに充電し過ぎると過充電になり、バッテリーの寿命を縮めてしまいます。
充電プラグをしっかりと差し込み、充電ボタンを押して「普通」のランプが点いたら充電開始です。
均等充電
均等充電とは、各セルの比重や電圧を均等化させる充電方法です。
フォークリフトのバッテリーは、セルと呼ばれる2Vの電池を24Vの場合は12個、48Vの場合は24個直列に並べたもので構成されています。日々フォークリフトを使う中で普通充電を繰り返していくと、電極からの距離などの要因から各セルに性能差が生じてしまいます。セルごとの性能差が大きくなることで、バッテリーが100%充電できなくなるおそれがあるため、普通充電よりも長めに充電して各セルの性能差を均等化させます。
長期間使用していないバッテリーや過放電させたバッテリーを充電する際にも使用します。
☆注意ポイント☆
- 必要以上の均等充電はバッテリーの寿命を縮めますのでご注意ください。
- 均等充電は普通充電より充電時間が長いため、バッテリー液の温度が大きく上昇します。均等充電後にフォークリフトを使う場合は、十分に時間を置いて液温を下げてから使用してください。
- メーカー・型式によって、自動的に「普通充電」「均等充電」を選択する機種もございます。ご使用前に必ず取扱説明書をご確認ください。
充電プラグをしっかりと差し込み、充電ボタンを長押しして「均等」のランプが点いたら充電開始です。
予約充電
予約充電では、名前の通り充電を開始する時間・終了する時間を予約することができます。
あらかじめ設定した使用開始時間に充電が終了し、満充電状態で使用開始できるため、バッテリー液温低下による容量低下を防止する事ができます。
(例)連休前に休み明けの「○月×日 7:00」と予約→休み明けの朝から使用開始できる!
台数が多い現場では、予約することによって夜間の安い電力で充電できるので、コスト削減にも繋がります!
☆注意ポイント☆
- 開始・終了時刻は、フォークリフトに内蔵している時計の設定データに基づいているため、日付・曜日・時刻の設定が誤っていると正しく作動しません。
メーカーによって設定方法が異なりますので、必ず取扱説明書をご確認ください。
2.バッテリー車の充電の際に注意するポイント
鉛バッテリーを充電すると、化学反応によって爆発の危険がある水素ガスが発生します。爆発を防ぐため、水素ガスを溜めない・火気を近づけないよう注意してください。
☆注意ポイント☆
- バッテリー液の量を確認し、不足している場合はかならず補水をしてください。補水の方法はこちら
- 充電する場所は十分に換気を行い、火気を近づけないようにしましょう。
- 充電する際は、必ずキースイッチや補器類を切り、バッテリーフードを解放してください。
- 充電用の電源設備には、必ず漏電遮断機付きの電磁開閉器を取り付けてください。
- 充電ケーブルが熱を帯び火災につながることを防ぐため、充電ケーブルは束ねたままにせず、伸ばした状態で充電をしてください。
- 充電ケーブルをバッテリーフォークリフトの座席後部に保管する場合、ボンネットを閉めるときに充電ケーブルを挟んで破損させように注意してください。
3.充電に必要な電圧は100V?200V?
バッテリー式フォークリフトの充電は、専用の充電コードを使って行います。バッテリー式フォークリフトの充電は、基本的に三相200Vを用いますが、フォークリフトの機種や大きさによって100V(家庭用電源)で充電できる機種もございます。
三相200Vの場合、コンセントプラグに様々な種類があるため、バッテリー式フォークリフトの導入を検討されている方は配電盤の受け側のプラグ型式をご確認ください。
ピー・シー・エスでは、バッテリー式フォークリフトをレンタルされるお客様の充電環境に合わせた充電コードをご提供できるよう、代表的な6種類のプラグをご用意しております。
また、プラグの片方が裸線になっている充電コードを使うことで、分電盤から直接充電することも可能です。
100V電源・200V電源で充電可能なフォークリフトのレンタルはこちら
4.バッテリー車の充電設備に必要な電気容量
充電に必要な電圧が100Vのものと200Vのものがあるように、バッテリーフォークリフトでは機種や許容荷重に応じてトランス容量や必要な電気容量が異なります。ここでは、トランス容量から、充電に必要な電気容量を計算する方法をご紹介します。
まず、メーカーが公表しているフォークリフトの諸元表から、トランス容量を調べます。フォークリフトの充電に必要な電流(A)は下記の計算式で求められます。
たとえば、トランス容量6.3kVAのフォークリフトを三相200Vの電源で充電する場合、
このことから、三相200Vで18.18A以上の電気容量があればこちらのフォークリフトの充電が可能ということになります。ピー・シー・エスでは、レンタルフォークリフト用として三相200V用20Aと30A対応の充電ケーブルをご用意しております。
ただし、こちらは目安としての計算になりますので、他にお使いの機械によってより大きな電気容量が必要となる場合もございます。フォークリフトご導入の際は、専門の電気工事業者へご相談ください。
5.フォークリフト1回あたりの電気代は?
電動フォークリフトの導入をご検討の方は、経費となる充電時の電気代が気になるポイントかと思います。バッテリーフォークリフトの使用環境や年数、車両サイズ、型式などにより異なりますが、ここでは標準的な1回の充電時の電気代算出方法をご紹介します。
フォークリフトの充電電気代は、バッテリーの電圧(セル数)と容量(AH/5HR)、ならびに充電効率によって異なります。また電気代単価も契約KW(キロワット)の大きさ、あるいは夏季とその期間以外でも単価が変化しますが、一般的な充電電気代は次の式によって算出します。
バッテリーは、交流・直流の変換や蓄電・充電時の化学反応、自己放電などが影響して、外部電源から充電した電力を100%出力できるわけではありません。
外部から供給した電力量に対して放電できる割合は、直流・交流の変換率(充電器効率)と充電した電池容量に対し際に放電できた容量が占める割合(蓄電器効率)を掛け合わせて、おおむね0.7~0.75(70~75%)程度とされています。ここでは充電器効率×蓄電器効率を70%、さらに1日でバッテリー容量のうち75%の電気を使う(放電深度75%)と仮定します。
さらに、全国家庭電気製品公正取引協議会が示している「新電力料金目安単価」では、2024年6月現在1kWhあたり31円(税込)とされているため、こちらの単価を採用し、7FB15(48V 400AH/5HR)の充電1回あたりの電気代を算出すると、
となるため、充電1回あたりの電気代は約637.7円ということになります。
なお、バッテリーサイズ(容量)はバッテリーの側面などに記載されておりますので、そちらをご確認ください。
いずれも、放電深度75%として算出しましたが、お客様の使用状況によっては条件が異なります。実際に算出する場合は、個々のバッテリーフォークリフトで充電何%まで作業をするかを加味して算出することが望ましいでしょう。
6.充電できない!よくある事例と対処法
こちらでは、フォークリフトの充電に関する事例をご紹介いたします。充電に関するトラブルは重大な事故に繋がりますので、何かご不安な点がございましたらすぐにフォークリフト専門店へご相談ください。
【事例①】フォークリフトを充電しようとしたらブレーカーが落ちた
- 原因…充電コードの断線 切れた線が他の配線と接触してショートしたもの
- 対処法…充電コードの抜き差しはコードではなくプラグ本体を握っておこなう
バッテリーフォークリフトをお使いのお客様から、充電しようとしたところ工場のブレーカーが落ちてしまったとご相談をいただきました。充電コードのプラグを開けてみると、赤い線が焦げて断線し、他の配線と接触してショートしていることがわかりました。
危うく火災になるところでしたが、幸い工場内のブレーカーが落ちだけで大きな災害にはなりませんでした。
屋内での使用の場合、フォークリフト用充電コードの耐久年数は通常40,000時間(通電時間)程度で、10年ほど使用しても問題なく、経年によるフォークリフト用充電コードの表面のよじれや強い力を加えない限り断線を起こさないとされています。
ご担当者の方へご使用状況をお伺いすると、毎日充電コードの抜き差しをする際に強い力が必要なプラグではなくケーブルを引っ張って外すことがあったとのことでした。充電コードそのものを引っ張ったことにより、固定されている内部の線が緩み、断線したと考えられます。
このような事故を起こさないよう、当社では対策品として充電コードに力を加えずに抜き差しできる平型グリップを採用しております。
【事例②】充電が作動しているのに充電できない
- 原因…充電コードの断線
- 対処法…充電コードの抜き差しはコードではなくプラグ本体を握っておこなう
弊社サービスマンがお客様からご依頼いただいたフォークリフトの月次点検を実施していたところ、充電作動音(ブ~ンという音)が小さいことや、充電コードが焼損していることを確認し、充電コードの断線と断線に伴う充電不良を発見しました。
こちらのケースでは、充電プラグも焼損していたため、充電プラグの交換修理を実施いたしました。
【事例③】充電タイマーの点検ランプが点灯して充電できない
- 原因…充電中に停止ボタンを押さずに充電プラグを抜いてしまった、充電中に何らかの原因で建屋のブレーカーが落ちてしまった、など
- 対処法…バッテリーのプラグを抜き、数十秒置いてからバッテリープラグを差し直す(充電タイマーがリセットされて点検ランプが消灯します)
こちらの対処法はフォークリフトの機種によっても異なりますので、まずはお使いのフォークリフトの取扱説明書をご覧ください。点検ランプが消えない場合や頻繁に点灯する場合は他の原因が考えられるため、専門業者へ修理をご依頼いただきますようお願いいたします。
【事例④】充電プラグを差してすぐに充電が始まる
- 原因…浸水や断線、接触不良、経年劣化など、なんらかの原因で充電タイマー基板が不良となったもの
- 対処法…充電タイマー基板交換修理
このように、バッテリーフォークリフトの充電不良はさまざまな要因から修理が発生します。
フォークリフトの専門業者であるピー・シー・エスでは、専門的な知識や技術が必要となるバッテリーフォークリフトの修理ももちろん承りますので、いつでもお気軽にお問合せください。
まとめ
こちらの記事では、バッテリーフォークリフトの充電の方法と注意点、電源の選定、充電できないときの対処方法などを解説しました。バッテリーフォークリフトは非常に便利な反面、繊細な機械になりますので日ごろのお手入れや丁寧な取扱いも重要です。
また、これから夏へ向けて雷が多く発生する時期に突入します。そんな雷ですが、雷によってもたらされる大きな電流はフォークリフトに大きなダメージを与えてしまうこともあるのです。
雷がフォークリフトに直撃した場合はもちろん、フォークリフトのご使用場所やその付近に雷が落ちた場合も、外部の電線から強い電流が瞬間的にブレーカーを通過し充電ケーブルを経て、または地面から直接フォークリフトへと伝わることで、フォークリフトの基板や電子的な部品を破損させてしまう……ということも!
まずは充電ケーブルを通じた事故を防げるよう、雷注意報や警報が出ている場合や遠くに雷鳴が聞こえる場合は充電を中止して充電プラグを車体と切り離し、コンセントから電源プラグを抜いてください。雷が近くに落ちているときは落雷時に感電の恐れがあるため、フォークリフトや電源プラグ、充電ケーブルに触らないように気を付けましょう。
こちらの記事の内容で解決できないお悩みやお困りごとがございましたら、ぜひピー・シー・エスまでご連絡ください。最後までお読みいただきありがとうございます。
今回の記事はピー・シー・エス仙台営業所の中野がお送りしました。