【DPFとは】フォークリフトでの仕組み・再生方法・規制・メンテナンス完全ガイド!

近年、フォークリフト業界でも「DPF」という言葉を耳にする機会が増えています。
最近ではDPFレスを貫いていたトヨタの新型フォークリフトにDPFが搭載されたことでも話題になりました。しかし、「DPFって何?」「なぜ必要なの?」と疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。
今回は、フォークリフトに関わる全ての方に知っていただきたいDPFについて、役割や基本的な仕組み、適切な運用・メンテナンス方法まで、わかりやすく解説します。
DPFとは?
DPF(Diesel Particulate Filter)とは、排気中の煤(PM)を捕集し、高温で燃焼(再生)して除去する排気ガス浄化装置です。
ディーゼルエンジンから排出される目に見える黒煙やPM2.5を低減し、クリーンな排気ガスにすることで、作業環境の改善と環境保護を両立させる役割を担っています。

最新の排ガス規制に対応したDPF搭載フォークリフト
なぜDPFが必要なのか?
ディーゼルエンジンは燃費が良く、トルクが大きいという特徴がある一方で、燃焼時に以下のような有害物質を排出します。
- すす(PM)
目に見える黒い煙の主成分 - 窒素酸化物(NOx)
大気汚染の原因となる物質
これらの物質は環境汚染や健康被害の原因となるため、国際的に排出量の規制が強化されています。
日本でも「特定特殊自動車排出ガス規制法」(通称:オフロード法)により、一定の基準をクリアしたフォークリフトのみが販売できるようになっています。
☆関連記事→ 比較解説:ディーゼルエンジンとガソリンエンジン #オフロード法 | フォークリフトのスペシャリスト ピー・シー・エスの業務日誌

DPF(TCM FD70-3)
DPFの仕組み
DPFは、排気管の途中に設置されるフィルターです。多孔質セラミックで作られたハチの巣状の「ハニカム構造」を持ち、複雑な通路の中で排気ガスからPMを効率的に捕集します。
- 粒子の捕集
排気ガスがDPFを通過し、エンジンで燃焼した際に発生するPMを捕らえ、フィルター内部に蓄積します。 - 再生(燃焼除去)
DPF内に一定量以上のPMが溜まると、軽油を排気管に追加噴射し、酸化触媒(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)で排気温度を約500~600℃程度まで上昇させます。
これによってPMが高温で燃焼し、フィルターを綺麗にすることができます。この動きを「再生」と呼びます。 - 排出
PMが燃焼したことで、最終的にはクリーンな排気ガスが車外へ排出されます。
酸化触媒とは何かというと、「DPFの前処理としての排ガス浄化」と「DPF再生に必要な高温環境や反応物を提供」の二つを担う、PMの確実な燃焼とクリーンな排気を支える存在です。
酸化触媒には白金やパラジウムなどがコーティングされており、これらの触媒作用によって一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)などの有害成分が酸化され、無害な二酸化炭素(CO₂)や水(H₂O)に変化します。
また、低温時でもこの酸化触媒が排ガス中の一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO₂)に変換し、この二酸化窒素(NO₂)がDPF内でPMをより低温で燃焼させる補助反応も行います。
つまりDPFは、ディーゼルエンジン特有のPMをしっかり捕集・燃焼することで、大気汚染と健康被害を防ぐ重要な排ガス後処理装置なのです!
「自動再生」「手動再生」「強制再生」の違いって?
DPFの「自動再生」と「強制再生」の違いは、再生の開始方法と用途にあります。
- 自動再生
フォークリフトのコンピューターが、走行中にDPF内のPMが一定量溜まったことを検知すると、自動的に燃焼処理(DPF再生)を開始します。
通常の運転条件(エンジン回転数や温度)が一定基準に達したタイミングで、排気温度を上昇させてPMを燃焼させるため、オペレーターの操作は基本的に不要です。
エンジンの回転数が上がりますが、作業はそのまま継続することができます。

DPF警告灯の一例(TCM FD70-3)緑点灯は自動再生中を示すことが多いです。
- 手動再生
DPFにPMが多く堆積して自動再生が追い付かない場合や、警告灯が点灯・点滅した場合にDPF再生ボタンを押して意図的に再生を開始します。
短距離走行やアイドリングが多い使い方の場合は温度条件が達成しにくく自動再生が進まないため、高回転のアイドリングを一定時間続け、DPF内のPMを意図的に燃焼する必要があります。
手動再生を無視し続けると、出力制限やエンジンチェックランプ点灯などの制御が入り、専門家の修理が必要となることもあります。DPF警告灯の一例(TCM FD70-3)点灯・点滅など表示方法は機種によって異なります。
<手動再生の方法>
①車両を安全で平坦、かつ騒音に配慮した場所に移動します
②駐車ブレーキをかけて、シフトレバーをN(ニュートラル)にします
③エンジンをかけたままDPFスイッチを押します(トヨタ→2秒以上長押し、ロジスネクスト→下側)
④エンジンの回転数が上がり、DPF再生が開始されます
⑤再生が終了すると、DPF警告灯が消灯し、エンジンの回転数が平常に戻ります。DPFスイッチの一例(右:トヨタ 42-8FD25 左:TCM FD70-3)
- 強制再生
DPFのつまりが進行し、自動再生や手動再生をうまく行えなくなった場合、整備機器を使って外部から人為的に高温状態を作り出し、DPF内のPMを燃焼させます。
主にディーラーや整備工場などの専門業者でしか実施できない最終手段で、一般的な運転中に行うことはありません。
簡単にまとめると、「自動再生」は通常の運転環境で車両が自律的に行う日常的な処理、「手動再生」はドライバーが行う日常的な処理、「強制再生」は自動再生が不可能なほど詰まりが進んでしまった場合の人為的・専門的な復旧です。
強制再生を行わなくてはならない状況に陥らないよう、適切に自動再生・手動再生を行いましょう。
フォークリフトにおけるDPFの重要性
フォークリフトにおけるDPFの役割は、主に「排出ガスに含まれるすすや黒煙を大幅に除去」し、「作業環境と地域環境をクリーンに保つこと」にあります。
ディーゼルフォークリフトはパワフルで屋外作業に最適ですが、DPFで排ガスがクリーンになることで、規制への対応と高いパワーを両立させることが可能となります。
環境保護と法令順守
DPFはディーゼルエンジンから排出されるPMを大幅に削減し、厳しい排ガス規制にも適合できるため、環境保護と法令順守の両面で重要な装置になっています。
DPFの導入によって、工場や倉庫内の空気環境が改善され、壁や商品が黒く汚れることも防止することができます。
健康・安全対策
ディーゼルの排ガス中に含まれるPMは、呼吸疾患や肺がん、喘息の原因とされており、DPFはそのリスクを軽減する役割を担っています。
フォークリフトにおいてDPFなどのPMを放出しないための装置用いることで、作業員への健康被害の予防にも直結します。
☆現在日本で流通している多くのフォークリフトはオフロード法の厳しい規制をクリアしているため、DPF装置が付いていない=健康に悪いというわけではありませんのでご安心ください!
エンジン保護・機器の健康維持
DPFを適切に用いることで、PMがエンジン内部や排気系部品に蓄積することによる故障やトラブルを防ぎ、エンジンの寿命を延ばすことに貢献します。
DPFは粒子状物質を大幅に低減する性能を持ち、そのPMを燃焼させる機能も備えているため、長期間の使用による目詰まりや性能低下を防ぎながら運用することができます。
DPFはフォークリフトの環境性能を高めるとともに、作業効率と安全を支え、社会的責任まで果たしてくれる重要な装置なのです!

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DPF搭載フォークリフトの運用ポイント
DPF搭載フォークリフトをより快適に長くご利用いただくため、日頃の運用やメンテナンスの方法について解説します。
1.燃料管理
・適切な燃料を使いましょう!
燃料はガソリンスタンドなどで一般的に軽油として購入できる「超低硫黄軽油」を用いましょう。
硫黄が多く含まれる粗悪な燃料を使うとフィルターにダメージを与え、性能低下や寿命短縮の原因となります。DPFを長持ちさせるには、まず正しい燃料選びが基本です。
2.DPF再生時の注意点
・操作パネルの警告灯確認
DPFに関連するチェックランプやアラートが点灯した際は、必ず取扱説明書に従い適切な再生処理をしてください。
無視して運転を続けると、エンジン保護のために出力制限や異常停止につながります。
・自動再生中のエンジン停止は厳禁
自動再生(多くの機種では緑ランプ点灯中)は、すすを燃焼中です。
エンジンの回転が上がることで不安になりエンジンを切ってしまう方も多くいらっしゃいますが、このタイミングでエンジンを切ると、PMが燃え残り詰まりや再生不良の原因になります。自動再生が完了するまではエンジンを止めないようにしましょう。
・適度な連続運転を確保
短時間の断続運転ばかりでは排気温度が上がらず、再生処理が正常に行われません。定期的にまとまった運転時間を確保することがDPF寿命を大きく左右します。
・屋内再生時は換気を徹底
再生時は高温排気ガスが多く排出されるため、倉庫・工場など換気が不十分な場所では一酸化炭素中毒のリスクがあります。やむを得ず屋内で再生する場合は、必ず十分な換気をしてください。
また、再生中は高温排気となりますので、火災ややけどの防止のため可燃物や人員から距離をとるようにしましょう。

やむを得ず屋内でDPF再生を行う際は、十分な換気を行い、周囲に可燃物が無いことを確認してから実施してください。
3. 定期点検・清掃
・メーカー推奨の点検間隔を守る
使用環境によって差はありますが、定期点検は寿命延長に欠かせません。
・異常時は迅速に整備
警告灯が頻発する、再生が完了しないなどの症状が出たら、早めに専門業者に点検を依頼しましょう。重度の詰まりになる前に対応すれば、修理コストも抑えられます。
☆修理のご依頼はこちら → フォークリフト修理 【フォークリフトのPCS】
よくある質問(FAQ)
Q1. フォークリフトのDPFとは?
A. ディーゼル排気中の煤(PM)を捕集し、高温燃焼で除去するフィルター装置です。屋内作業や環境保全の観点で重要な役割を果たします。
Q2. DPF再生はどうやって行う?
A. フォークリフトが自発的に行う自動再生と、オペレーターが行う手動再生があります。フォークリフトは断続運転が多いため、手動再生が必要になる場面もよく発生します。
手動再生を行う方法は、オレンジ色のDPF警告灯が点灯・点滅した際に「DPFスイッチ」を押すことが一般的です。
<手動再生の方法>
①車両を安全で平坦、かつ騒音に配慮した場所に移動します
②駐車ブレーキをかけて、シフトレバーをN(ニュートラル)にします
③エンジンをかけたままDPFスイッチを押します(トヨタ→2秒以上長押し、ロジスネクスト→下側)
④エンジンの回転数が上がり、DPF再生が開始されます
⑤再生が終了すると、DPF警告灯が消灯し、エンジンの回転数が平常に戻ります。

DPFスイッチの一例(右:トヨタ 42-8FD25 左:TCM FD70-3)
Q3. DPF警告灯が点いたら?
A. 緑色の警告灯が点灯している場合はそのまま作業を続けていただいて問題ございません。オレンジ色の警告灯が点灯・点滅している場合は手動再生を実施してください。無視すると出力制限がかかり、最悪の場合作業不能に陥ります。
Q4. メンテナンス間隔は?
A. 使用環境により異なりますが、数百時間ごとに点検、数千時間で清掃・交換が必要です。粉塵環境や低温地域では早まることもあります。
Q5. DPF非搭載のフォークリフトは使っていいの?
A. オフロード法に適していれば、DPF非搭載のフォークリフトもDPF以外の様々な技術とメーカー様の努力により環境性能に問題ない状態となっておりますので安心してご使用ください。
オフロード法適合シールが貼っていない車両でも既販車は継続使用可能ですが、地域条例などで制約がある場合があります。購入・運用前に適合状況をご確認ください。

オフロード法の基準適合表示
まとめ
DPFは、ディーゼルフォークリフトにおいて環境保護と高い出力を両立させるために非常に重要な技術です。
適切なメンテナンスを行うことで、ディーゼルフォークリフトの能力を最大限に用いることができるようになります。
DPFはよくわからなくて不安……という方も、フォークリフトの新規導入や入替をご検討の方は、ぜひDPF搭載モデルもご検討ください。

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今回の記事はDM部の中野がお届けしました。
参考文献
・排出ガス後処理装置 DPF再生|しくみと注意点|トヨタL&F
・「DIESEL ENGINE EXHAUST CARCINOGENIC」 IARC(WHO)
・特定特殊自動車排出ガス規制法 | 大気環境・自動車対策 | 環境省
・「オフロード法(排出ガス規制)及び 2014 年改正」建設機械施工 Vol.66 No.10
・「平成22年特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律施行規則等一部改正について 」環境省・経済産業省・国土交通省